「散るが愛しい」詩人にそう言われて赤色は削ってもらってて、水色にはそれが面白くない。水色は詩人が大好きであったので、自分も削ってもらいたかった。紫色はクールに、水色の羨望に満ちた顔を無表情で観察していた。全く詩人に触られたことのない白色は水色に少なからぬ同情を抱いた。長身を起こし、「気散じに、ちょっと出ないか?」と誘いの声をかけた。白色に連れ添うようにして水色はコロコロと一緒に転がっていった。
白色と水色のささやかな反逆を、赤色や青色や茶色は他人事として横目に眺めていた。しかし黒色は薄目をあけて、白色と水色が何処まで行くのかを、静かな情熱をもって見届けようとしていた。黒色の瞳は、他の全ての色を真っ直ぐに見据えることに長けていた。他は皆偏った見方しか出来なかったが。
白色は机のわきのゴミ箱に真っ直ぐ落ちてしまったが、水色はまだ勢いを残し、階段まで達し転がり続けていく。
皆気づいてなかったが、黒色はずっと目で追っている。見えなくなってもカン、コンと水色の足音を聴いている。