埃をかぶった、納戸の奥の長持からくしゃくしゃの反故紙を掻き出して、小鬼は大事に木箱にしまっている。木箱は、小鬼の宝物入れだ。そんなごみを、と家のものは鼻白むが小鬼は蒐集を止めようとしない。わたしは国語の先生をやっていたお爺ちゃんから、「ロングロングアゴー、大昔、紙は貴重だったので、書き損じや、帳面の裏の余白をメモ代わりにフルに使ってた」と聴いたことがある。なので、小鬼も、例えば定家の未発見の和歌などが書き付けられた紙背文書を捜しているのかな?といぶかった。小鬼はそんなわたしの懐疑をてんで気にせず、木箱をくしゃくしゃの紙でぎゅう詰めにして息を切らし、高揚してる。