木曜日の夕方、トクさんは唐草模様の風呂敷を抱えて出かける。西日の当たる廊下の端までゆくと、風呂敷からお面を取出し、風呂敷を背に羽織る。しばし仁王立ちになった後、夕日に向かって変身のポーズをとり、飛び上がろうとする。そして、何事もなかったようにお面を外し、風呂敷に包んで部屋へ戻る。
土曜日の昼下がり、ミヨさんはピアノを叩く。右手の人指し指をピンと伸ばし、左から右へ、白鍵 黒鍵 白鍵 黒鍵 白鍵 白鍵 黒鍵 白鍵 黒鍵 白鍵 黒鍵 白鍵 白鍵...。最高音まで辿りつくと、ミヨさんは子供の顔になっている。お母さんが迎えに来るのを待っている。
月曜日の朝、私はごはんつぶを手にとり笑顔を張り付ける。乾くとゴワゴワする。