夜の青さをひとつひとつ消していくサービスエリアにバイクを停めて、僕は皮のグローブを外し、ポケットからコインを3枚取り出す。いつだってこの時のホットコーヒーは僕の手のひらと心にしっくりに馴染んで温かい。ヒマつぶしに缶に貼られた
「今日の占い」というラベルを剥がしてみる。裏にはホームページのアドレス。空き缶を灰皿に一服しながら、携帯電話を取り出しアドレスを打ち込む。すぐにサイトが現れる。おもちゃじみた天使が「今日のキミは...」とおどける。
「今日のキミは、空を泳ぐ魚。君を待ている人がいるよ。口を大きく開けて深呼吸してみよう。今日はキミの声が届く日」
ふふっ、そうかい?そして大きく深呼吸。天使にウインクして携帯を閉じる。空き缶をゴミ箱へ投げ入れ、メットをかぶる。バックミラーに映る西の空。沈む赤い月を一瞥し、スコンとギアを入れる。風が透明感を増す。最後の峠に向かってアクセルを開く。空の青がふっと明るくなる。コーナーを滑らかにクリアしていく。眼下に町が見えてくる。いらかの波にひるがえる魚の群れを抱いて、町が朝に満たされていく。おはよう。迎えにきたよ。