ああ今夜はこんなに月の明るい晩なのに俺は死にもしないで飲んだくれている。
きっと今頃花の下は死に場所求める人の群れがぞろぞろ歩いているだろう。
誰れも彼れもうっとりと酔ったような顔をしてそぞろに歩いているだろう。
花の根元に吸い込まれ人が霞んでいなくなる。ひとりひとりと減っていく。
それでも人は気づかずに天を仰いでぽっかりと丸い口あけ歩くだろう。
降りみ降らずみ花びらとうすむらさきの月光を喉の奥へと注ぐだろう。
月すら消える夜明けには虚ろがそこにあるばかり。
残りは赤い薄闇と酒に溺れた俺ばかり。