この公園を突っ切れば会社への近道。なんて思ったのが間違いだった。真夏の公園なんて行くもんじゃない。暑苦しい蝉時雨。炎天下の遊歩道をハイヒールを鳴らして歩くのももう限界だ。道を逸れて、鬱蒼と茂る木立の下の暗がりへ逃げ込む。夏の日差しに慣れた目に木々の下の闇は深い。蝉の声だけが聞こえ・・・ちがう。
ロココロココロココロココロココロココココロ
名前を呼ばれた気がした。振り向くがなにも見えない。
ロココロココロココロココロココロココココロ
ロココロココロココロココロコヒロココココロ
名前を呼ばれた気がした。見上げるがなにも見えない。
ロココロコヒロココロココロコロココココロロ
ロココヒロココロココロココロココヒロコココ
名前を呼ばれた気がした。黒猫が近づいてくる。ポトリとなにかを足元に落とす。拾い上げる。子供の頃に失くした人形。名前をつぶやこうとして、覚えていないことに気づいた。
ロココロココロココロココロココロココココロ
緑陰の奥深く呼ぶ声だけが聞こえる気がする。