「どこかにいい場所はないかなあ」
もみじは風に乗って、くるくる回りながら落ちる場所を探していました。
「あ、あそこがいい」
乾いた土とまばらな草のあいだに、ぽっこりとした小さな丸い泥の山があるのでした。もみじはそこに降りました。そしてすぐに気がつきました。
「あれ?これ、あんぱんだ」
おもてにこそ泥がついていましたが、それは食べかけのあんぱんでした。カビが生え、腐りかけていましたが、それはあんぱんなのでした。もみじは、降りた場所が腐ったあんぱんだったので少しがっかりしました。けれども、あんぱんはほんのりと温かく湿っていて、なつかしい土の匂いがするのでした。もみじはここに根を下ろすことにしました。
「おひさま、おはよう」
毎日、太陽に向かって背伸びをして、もみじはすくすくと育ちました。
ある秋の日、もみじは青い空に茶色いマントをひるがえして飛んでいく者を見ました。
「うわぁ!カッコイイ!」
小さくなっていくその姿を見つめ、もみじは陽に透けて赤く輝く手をいっぱいに振りつづけました。