お城でゆでたまごが禁止になったのにはわけがある。
庭の梅の木にうぐいすが一羽おったげな。
それを見た奥方様がうぐいすの糞をご所望になった。
うぐいすの糞は女の肌を白くするのじゃそうな。
さっそく腰元が糞を取りにつぼを持って庭にでたが、
うぐいすめ、なかなかうまいこと糞を落とさぬ。
困った腰元はこっそり鶏小屋へ行き、糞をすくって
つぼにいれておいたと。知らぬということは恐ろしい。
美しくなりたい一心で、奥方様はそれを顔に塗っておった。
夜、殿が奥方様を抱き寄せるとなにやら鶏くさい。
わけを訊ねるとうぐいすの糞だという。奥方様は
「ゆで卵のようにつるりと白くなりたいのでございます」
とさめざめ泣いた。お優しい殿は、
「わしは生たまごのほうが好きじゃ」と慰めた。
それで殿が禁止になさったんだとさ。とってんこう。