物理的な拠り所がないので、気を抜くと霧散しそうになる体である。
宙ぶらりんの精神は誰の視覚に捉えられることもなく、どこともいえぬ空間で揺蕩い、自我を保つことがとてもむつかしい。おらは死んじまっただ。
叱ってくれる相手もおらず、たった独りの自覚だけがある。
なにせ身体がないのだから、周囲を知覚することもできないようだ。
血流をめぐらせるように思考をめぐらせて、私というものをなんとか留めようとする。
生まれてから、独りでいる。
拠り所がないから、霧散しそうになる。
考えることが、私の血であり肉である。
思考を閉じたらきっと消えて失くなってしまう。
夢見ることもなく、不安のなかを私は揺蕩っている。