まったく覚えがない訳でもないので、驚きはそうでもない。
恨みを買うような生き方をしてきた。
週末の環状線は滅多やたらと混んでいて、関係のない人が汚れてしまうのではないかなどということが妙に気がかりだ。刺されどころがよかったか、唸り声も出ない。うまいことやったものだ。力が抜ける。立っていられないかもしれない。誰かに寄り掛からざるを得なくなる。どうも、汚してしまいそうだ。
あと、やり残したことがあるから、ほんの少しそれを悔いる。
他にどうしようもない。
ごとん、ごとん。と心臓が速度をゆるめ、掠れる意識が、底のない虚に運ばれ遠のく、明日始まることもない、紛れもない終わりである。
喧しいはずなのに、何も聞こえない。
駅員にも起こしてもらえない。
これで、おしまい。
無事を祈る。