揉みますか? いや揉みません。
何の会話か、読んで字のごとく、揉むや揉まんやの問答である。
揉めば紅さす年の頃、というのは此方(こちら)の勘違いであって、さあ揉むのかどうかと云う姿に恥じらいは無し、よって昂(たかぶ)る気持ちもない。
揉みますか? いや揉みません。
アキアカネ飛ぶ。
秋染めし町にも昂る私を謗(そし)る眼には憂いもなく湿度を帯びた熱を乾かす。
おや、奮う心がなくとも、感ずる景色。
病かと思いし此の癖(へき)を鎮める、寒き少女の眼を覗く。
アキアカネ飛ぶ。
枯れた心臓を巻き戻すように、私の湿った熱を少し奪うといい。
萌える思いと、色失いし感情に、差し引き、差し挿れ、恥を知り、恥を知り。
先程は悪かった。少し、歩こう。
「なんだか、何も感じなくて。」
アキアカネ追う。