きみはいま月をみている。雲のない星のふゆぞらに、今日はとてもまるくあかるく光っている。月のまわりはぼんやりとしろく空のいろをかえていて、なんとなく、はくぎんというのはこういういろかもしれないと思っている。きれいな月。しろいいきをはきながらなぜかきみはひとりで夜道にたたずんで、ぼくのことを思い出している。
ぼくときみはおなじ年、おなじ町でうまれた。ちいさいときから仲がよかった。ふたりで近所のおばさんにしかられた。きみんちのおばちゃんが作ってくれたごはん、なんていうのかいまでもわからないけどおいしかった。そうやっておなじものをならんで食べたりした。そのうち、べつべつの道をすすんで、いっしょにいることもすくなくなってぼくは、町をでた。たまにふたりで会ったけど、さいきんはずいぶんみていない気がする。
ぼくはいま月をみている。雲のない星ぞらに、ちょうど、とてもまるくあかるく光っている。そうだね、はくぎんというのはこういういろかもしれない。きみはあしたも月をみるだろうか。こんなにきれいな月をおなじ町でふたりでみられたらよかったけれど。ぼくもひとりだ。こっちもさむいよ。だだっぴろい宇宙にほうりだされて。