夏と秋のあわいに、ふらり立ち現れては、ふいと去っていくんだそうで、この時分に未練があってのことかそうでもないのかそれは当人以外には推し測るくらいのことしかできない実体のない面影である。
もしかしたら、と心当たりを持つ者もいたとして、誰のもしやが正解なのだか知るよしもなし必要もないんだろう。
がんばったからって上手にいくとは限らない。そりゃあアタシだって分かってる。分かっちゃいるけど求めちゃうんだもの。勝手に傷付いて、噛みついちゃいそうだ。彼が口を開きかけるけど嗚呼きっとちがう噛みついちゃいそうだ。
件の影が、ふいに現れて置いてった言葉はアタシにであってアタシにではない。
呆気にとられたアタシたちに興味を無くしたようにふらり立ち去る。
「ウン、うまい」
「…ありがと」
アタシたちに未来は見えないけど。