物語は、乱暴に言ってしまえば、最終的には読者が完成させるのです。
私が判りにくい死に方をしたので皆困ったようだ。
最近思い詰めていたような気がします。
誰かが言う。
何故あいつが。
他殺と決まったわけではありません。
あそこの倉庫で。
この辺も物騒だからね。
私の死についての物語が組み立てられて、時に壊されまた組み立てられていく。
暴行された形跡はありません。
じゃあなんでこいつは全裸で死んでるんだ。
私は小説を書いていました。書いても書いても上手に出来ず、少し疲れてしまったのです。
何だこれは。
遺書、にしちゃおかしいですね。
けれど私は面白い事を思い付きました。
訳が分からねえ。
読者は、作者が与えた情報を繋ぎ合わせ自らの内に物語を作るのです。
こんなのが物語なものか。
私が与えたのはただの記号。
あの紙切れに意味なんか無かったんだ。
一筆だけの、私の小説。
どうかしてる。
母さんは、あれを昔私が絵に描いた星だと思うでしょうか。
奥さん、落ち着いて聞いて下さい。
それは違います。だけどそうだな、どうかたくさんの物語が生まれますように。
彼の小説は、瞬いてその願いを誰かに伝えることもない。