海音寺ジョー/ハルカス白昼夢 のバックアップ(No.1)


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 天王寺に久しぶりに寄ると、やたら綺麗になっていた。最近出来たという超高層ビルに上ってみる。空中庭園だ。海まで見はるかせる展望。ぐるりと一周、見て回ろうとしたが一角だけオブジェで塞がれてて眼下の景色が遮られている。ハロウィンの、雪だるまのような形をした橙のオブジェ。

 隙間からかろうじて覗けたのは飛田や西成の貧民街区だ。わざと見えづらくしているのか。臭いものには蓋なのかよと、大阪のお偉いさんたちの企みに腹が立った。

 俺は、オブジェと衝立の間を潜り抜けて、スラム地区を眺めた。瓦が古いからか、ここいらだけがモノクロに見える。

 奇妙なことに黒々とした瓦屋根のバラックは良く見えるのだが人影が全く見当たらないのだ。


 そんな馬鹿な。


 こんな平日の昼前に、何でこの集住エリヤに人の姿がないんだ?気づくと、他の見物客がいなくなっていて、警備員も消えフロアは俺一人になっていた。そんなはずは…さっきまで観光客がわいわいと周囲を取り巻いていたのに。俺は、自分が何かの禁忌に触れたのではないか、と訝しんだ。空調が止まったのか、あるいはずっと前から稼働してなかったのか静寂に包まれている。橙色をした雪だるまの巨大オブジェだけが、やけに生き生きとこの場を支配していた。

 時も止まったのか。何故か足が動かない。俺は、もう一度ガラス越しに眼下の景色を眺めてみた。街を。街そのものが遠い昔に会った人の顔に見えてくる。来る。

ジャンル Edit

リアル怪談大阪異国スラム?色彩

カテゴリ Edit

掌編/ハ行

この話が含まれたまとめ Edit

選評/感想 Edit

初出/概要 Edit

大阪てのひら怪談 参加作

執筆年 Edit

2016年?

その他 Edit

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