胡乱舎猫支店/ハンギングチェア
Last-modified: Wed, 24 Jun 2020 23:42:03 JST (1195d)
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注文から半年で夫のお待ちかねが届いた。これを取り付けるために書斎の天井を抜き、剥き出しになった梁を補強して金具を取り付けた。結構な出費だったけれど、あれ以来塞ぎ込んでいるのが元気になるなら安いものだ思うことにした。
北欧デザインだけどイメージは南国リゾート。リフォームしたとはいえ、こんな街中の古家に合うのか?と思っていたけれどラタン製だからか意外にしっくりきそうだ。
「後は取り付けるだけねぇ、工事の人に頼めば良かったのに」
「あの時はまだ届いて無かったからね。それに自分でいい感じにしたいんだ」
うちに元々あったものでは高さが足りないと今度はネットで熱心に脚立を探している。
同じ考え込むにしてもベッドの上で膝を抱えながらより、卵型に包まれてゆらゆら揺れながらの方がずっと、ずっといい。そうすれば澱の様に溜まったものは拡散してしまうかもしれない。
今日もまだ捜し続けている。何故か冷めたものを感じる情熱ーと呼ぶべきかどうかーとともに。でも夢中になれるものがあるならそれでいいとその背中に思う。
ー気に入ったのが早く見つかるといいね。早く吊るそう、ね。
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この話が含まれたまとめ 
評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第168回競作「ハンギングチェア」 / 参加作
執筆年 
2019年?
その他 
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