海音寺ジョー/誰かがタマネギを炒めている
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深夜のバルセロナ空港。エコノミー便はたいてい到着が遅くなる。日本人客がぞろぞろ移動するのに付いて行ってしまう。他国への乗り継ぎゲート。あわてて入国ゲートに引き返す。更に夜が更ける。
ロビーでは金太が、目をぎらつかせ待っていてくれた。
「日本人ツアー客を追ってギリシアに行くとこやった」
「君、油断しまくりやのう」
また言われてしまった。十代で大学選びに妥協した時。就活で飲食業に早々決めてしまった時。転職した時。彼のメキシコ修業時代に会いに行って、バスに旅券を忘れた時。
「君、油断しまくりやのう」
「まったくその通りや」
二人で大笑して、一旦ケリがつくのだった。
漫画家のアシスタント、給料月八万まで削られて怒って辞めて、十年ぶりに金太に会いに来た。
「ホテル予約した」
「いや、泊めてくれる?」
「俺のねぐら二畳の相部屋やから無理」
「どうしよ?」
「今から探したる」
「すまん」
「とりあえず、腹ごしらえや」
電車で移動し、中華料理屋に連れてってもらう。客席でテレビを見てた店主が、のそっと厨房に戻る。座ってると、甘い玉葱の匂いがした。彩りの良い五目焼きそばを出してくれた。カシューナッツも入ってて、本格的だなと思った。
ジャンル 
異国、バルセロナ?、中華料理?、会話劇、乗り物?、油断?、数字、俺
カテゴリ 
この話が含まれたまとめ 
評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第187回競作「誰かがタマネギを炒めている」 / 参加作
執筆年 
2022年?