海音寺ジョー/深夜旅行
Last-modified: Wed, 24 Jun 2020 23:50:58 JST (1187d)
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コタヤンが女に振られたというので、みなで海に行こうという事になった。
コタヤンは釈然としない顔で俺らに向かって「なんでやねん」と言った。
「オマエのうちひしがれた心を慰めるべく、俺らが一緒に海に行ったる言うてんねん」
サトウが説得力に満ち溢れた宣言をした。
「なるほど」
コタヤンは納得した。コタヤンはあまり人を疑わない。そんなイイやつなのだ。だから女にもてるのだろう。何故振られたかは、コタヤンが言わないので誰も知らない。
でも俺らは京都府長岡京市に住んでいる。内陸中の内陸だ。今は0時5分。終電はとうに出ている。一番近い海は敦賀浜であるが、車が必要だ。
ゴリ彦なら車を持ってる、と誰もが口を揃え、ゴリ彦に電話をした。ゴリ彦は眠たいから、と断った。
「オレ、明日も仕事なんや。朝早いんや。悪いが付き合えんわ」
「待て、ゴリ。おまえを男と見込んで頼むんや。コタヤンが女にふられたんや。今すぐ、海に行かなならんのや」
ゴリ彦は男だった。そういう頼まれ方にとことん弱かった。
ゴリ彦のパジェロに俺たちは乗り込んだ。
ゴリ彦もいいやつだ。なぜゴリ彦が女に持てぬかさっぱりわからない。
ゴリ彦のパジェロは月に背を向けて、敦賀へと走り出した。
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