海音寺ジョー/忘れられた言葉
Last-modified: Thu, 25 Jun 2020 00:21:31 JST (1399d)
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管理しきれない墓石が、どんどん運ばれてくる。墓石が隙間なく積まれているので、これら墓石のための墓場の地盤が、重みでカチカチに踏み締められて高密度だ。そのために重力の歪みが出来る程に。
鳩のサイズのドローンが、識別のため墓石のブロック上を矩形を描いて飛ぶ。
「くっ、擦り切れて戒名が読めねえ」
ドローンがくさす。それは仕方がない。墓石管理センター所長の僕は、心の中で応じる。
ゴゴゴ、と新しめの『ごみ』が運ばれてきた。ドローンがくるくると小躍りし、喜んでいる。この年からの墓石にはICチップが埋め込まれてる。十桁の番号を一瞬で読み取るドローンが
「楽だ楽だ」
と陽気に叫んでいる。僕はドローンに労働をねぎらうための御馴染みの声かけをしようと思ったが、その言葉が出て来なかった。ドローンの眼が、じっとこっちを見ている。
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初出/概要
超短篇・500文字の心臓 / 第169回競作「忘れられた言葉」 / 参加作
執筆年
2019年?
その他
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