海音寺ジョー/ブルース
Last-modified: Mon, 21 Mar 2022 23:37:11 JST (560d)
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広域火葬施設の放火事件が派手に書き立てられた年は、偏向報道とはいえ報道の自由が、まだ残されていた。良い時代だった。主犯格だった俺の親父は現役官僚だった。令和の大塩平八郎と、格好良く取り上げられたが、実際は短気なだけだった。空気も読めなかった。広域火葬施設は国営だったので代償はでかかった。凶悪犯罪への対抗手段と銘打ち、一気に改憲の流れが加速し言論統制と国軍の創設、徴兵制の復活までとんとん拍子に進んだ。俺はと言うと、語学が得意だったので貨物船籍に隠れて逃げ切り、メキシコ租界で故国の行く末を見届け中だ。
奥州のやさぐれた小説家が作中で予言した通り、北海道はロシアとインドが切り取り、本州はアメリカ、九州四国は中国に割譲された。沖縄は台湾に併合されたが、短期間で独立を勝ち得て一番かつての日本に近い国となった。
子供のころ、親父に沖縄旅行に連れてかれて「ここって異国だよなあ」と気候や城や、亀の様な形の墓を見てつくづく感じ入った思い出があるが、歴史を経て逆転した。今朝土葬が再開されたと、ヤフーニュースで読んだ。
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初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第186回競作「ブルース」 / 参加作
執筆年 
2022年?
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