海音寺ジョー/クスクスの謎
Last-modified: Wed, 24 Jun 2020 23:58:06 JST (1570d)
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店の休憩室に絵葉書が一枚張り付けてある。
大学生バイトの真麻が北海道に合宿に行った土産だと、昨夜貼ってったやつだ。旭山動物園で買ったと言ってた。オランウータンが仔を背負って、縄梯子を渡ってる写真。
中国人バイトの林海燕が、仕事上がりでタイムカードを押しに来た。事務机の前に貼ってるその写真を指さして
「シンシン!」
と言った。
「えっ?」
ぼくが戸惑っていると、海燕はメモ帳に素早く『星星』と書いた。
「シンシン?」
「そうデス。ターシンシンです」
海燕はそう言って、星星の手前に、大、と書いた。
大星星
「じゃね、サヨナラ、オチュカレサマ!」
と言って、海燕は帰ってった。
直後、夢枕獏の『闇狩り師』という小説を思い出して、「あっそうか、猩猩(ショウジョウ)か!猩猩を現代中国語では簡体字で星星、と書くんだ」と想到した。机のPCを立ち上げネットで調べたら、星星はゴリラのことだった。オランウータンも星星と言うのだ。
休憩時間が終わる。 シンシン!シンシン!と唱えながら、ぼくは仕事に戻った。
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この話が含まれたまとめ
評価/感想
初出/概要
超短篇・500文字の心臓 / 第144回競作「クスクスの謎」 / 参加作
執筆年
2015年?
その他
関連作:海音寺ジョー/大星星
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