よもぎ/最終電車
Last-modified: Sun, 25 Apr 2021 23:44:37 JST (1090d)
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駅のホームにスーツケースを持ったサラリーマンが立っていた。ふいに彼は左耳を下にしてケンケンを始めた。耳に水が入った時みたいだな、と思いながら眺めていると、今度は向かいのホームで、スーツのOLが首を傾け耳を下にしてケンケンを始めた。あっけにとられて見ていると、階段からにぎやかな声がして女子高校生のグループがホームにやってきた。すると、女子高生たちもそれぞれ首を傾けてケンケンを始める。気がつくと、向かいのホームのみんながみんな、こちらのホームのみんながみんな、駅員までが耳を下にしてケンケンをしている。自分もやらずにはいられなくなって右耳を下にしてケンケンをした。そこへ、いつもの電車が到着した。その時みんなの耳からいっせいにパァッと七色の光が飛び出して電車を虹色のリボンで彩った。ホームに拍手が巻き起こった。ああ、そういえばこの電車は今日で引退だったんだ、と妙に納得した。
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初出/概要
超短篇・500文字の心臓 / 第122回競作「最終電車」 / 参加作
執筆年
2013年?
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