よもぎ/うめえよ

Last-modified: Tue, 29 Jun 2021 22:55:33 JST (1030d)
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俺が大釜の爺さを助ける!

俺は広い世の中へ飛び出した。

けど、大釜の爺さの封印を解くなんてどうしたらいいんだろう。

俺ぁ爺さの釜底の煤から生まれたちっぽけなススダマだ。

村ん衆みんなの芋汁をいっぺんに炊ける大釜の爺さに比べたら、屁みてぇなもんだ。

けど爺さは偉ぇ坊さまに札を貼られちまった。

爺さが大釜から毒を吐いたって。

そりゃ仕方ねぇよ。

大釜の爺さを化け物にしたのは村ん衆だ。

戦や飢饉で喰うもんがなくなったとき、村ん衆は大釜に毒づいた。

その毒がたまりにたまって大釜の爺さから溢れ出したんだ。

けど爺さは悪くねぇ。絶対悪くねぇ。

俺は何十年も何百年も風に吹かれてさすらった。

「みなさんの給食はここで作られています」

「すげえ!でっけー鍋!」

「これは回転釜です。煮物や汁物を作るときに使います」

「先生!なにか黒いものが付いてます」

「あら。じゃ、いつものお礼にみんなで磨いてあげましょう」

なんと子供らに見つかっちまった。

釜のあちこちを逃げ回ったが、子供らはすぐに俺を見つける。

俺ぁ拭き取られて、釜はピカピカに磨き上げられた。

すると『ありがとよぉ』

遠くで爺さの声がした。封が?これで?解けたのか。

爺さがやってきた。『儂らもちょっと喰ろうていくか』

「手を合わせてください。いただきます」

「いただきます!」

『あぁ、子供らの笑う顔を見ながら喰う飯はええなぁ』

爺さと俺ぁ満ち足りて天へ昇った。

ジャンル Edit

500文字?妖怪ありがとう数字子ども老人

カテゴリ Edit

超短編/ア行

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評価/感想 Edit

初出/概要 Edit

超短篇・500文字心臓 / 第142回競作「うめえよ」 / 参加作

執筆年 Edit

2015年?

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