まつじ/隣りの隣り5
Last-modified: Wed, 19 May 2021 23:51:16 JST (1434d)
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はじめて君に会ったとき僕達は中学生で、その頃から君は可愛かった。言えなかったけどね。ふたつずつくっついて教室に並んだ机で隣りになることはなかったけど、通路をはさんで隣りになったことはある。やった、と思った。でも僕はろくに話しかけられなかったし休み時間になると君の友達が間に入ってくるし、隣りというよりもうひとつ向こうにいる感じで、ちょっと遠かった。
高校も同じだった。こっそり喜んだ。こっそり小踊り。同じクラスにはならなかったけど。二年の夏休み明け、一番仲の良かった友達に彼女ができた。三人でいるとき君は彼の向こう、隣りの隣り。
僕は専門学校に進んだ。彼女は予備校通い、彼氏は大学進学。まあ、そうそう会うこともなくなった。少しありがたかった。
何ヶ月か後に偶然出会った君は彼と別れていて、そのときはそんな話とかそうでない話とかして。
中略。
「おとうさんはやく」
呼ばれて後ろからのぞきこむ僕の隣りには、誕生日ケーキに三本立てたロウソクの火を吹き消す娘がいる。
僕と反対側、娘をはさんで隣りの隣り、君は僕と声をそろえて「おめでとー」「おめでとー」、ニッコリ微笑んで、これから三人で君の作ったケーキを食べるのだ。
うん。
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この話が含まれたまとめ 
評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第52回競作「隣りの隣り」 / 参加作
執筆年 
2005年?
その他 
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