まつじ/象を捨てる11
Last-modified: Tue, 19 Jan 2021 23:23:03 JST (981d)
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父さんはいつだって言うことが唐突だ。
「おれはもう鼻は使わないし、水浴びもしない、草も食わずに肉を食うぞ、肉を」
なんて言いだしたからぼくもふざけて言い返してやった。
「なんだいそりゃあ、どうせ使わないなら鼻なんかちょん切っちゃえばいいじゃない」
すると父さんは
「うむ、そうだな、それもいいかもしれん、ぶらぶら邪魔くせえ。耳もでかくてパタパタうるさいし、大体にして体がでかすぎるんだ、もっとコンパクトになりたいねコンパクトに」
だって。呆れるね。
こんなだから母さんが出てってしまうのだ。
「父さん、それはもう象じゃないですよ」
「うむ、おれは象をやめる」
付き合ってられないね、と思ってぼくは眠ってしまったのだが、それ以来父さんの姿を見ていない。
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評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第42回競作「象を捨てる」 / 参加作
執筆年 
2004年?
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