まつじ/期限切れの言葉
Last-modified: Wed, 20 Oct 2021 23:28:49 JST (915d)
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あらわれたものというのはやがてそのうちに消えてゆくことがおそらくは決まっています。生きているものも、死んでいるものも、ただそこにあるものも、わたしたちのようなひじょうにあいまいな存在も、たとえばいつか使おうとおもい財布にいれておいたなにがしかの無料券がある日をさかいにただの紙きれとなるように、なんの意味もないものになる、どころか、いた、あったことすらじきに忘れられてしまうのです。
わたしというのはそれ以上で、まったくもって誰にも知れずに消えてしまいました。ひとから生まれたものであっても、そこらへん、あやつりきれないところもあるようで、あなたがあのひとに、あのひとがあなたに、「 」と言うことがなくなったことに、あなたは気付いていないとおもいますが、それがわたしです。
もしかしたら、人類よりもわたしたちのほうが先に終わってしまうのかもしれません。
いつまでもある、いつでも話せる、いつも使えるとおもっていたら、そうでもないのかもしれません。
あなたたちがよく言う
「 」
とか、は、ああ、これももう手遅れのようです。
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初出/概要
超短篇・500文字の心臓 / 第85回競作「期限切れの言葉」 / 参加作
執筆年
2009年?
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