まつじ/引き算8
Last-modified: Wed, 04 Nov 2020 22:36:01 JST (1593d)
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ある年、飢饉のために家族全員が食べていくことが難しくなったので、
老いた婆さんを一人山に捨ててきました。
婆さんは何も言わずに弥之助と別れ、山奥へ消えていきました。
一人減って、残りは五人。
みんなの食べられる量が少しだけ増えます。
飢饉は長引き、それでも食べ物が足りなくなったので、子どもを一人、口減らしのために殺しました。
また一人減って、残りは四人。
ようやく残りの家族がなんとか生き伸びました。
こんなことならはじめの子どもを殺すのではなかった、と弥之助は思いました。
生き残った三人はそれなりに幸せに暮らしました。
やがて一人娘が他家に嫁ぎ、残りは二人。
年をとって、妻が死に、最後に弥之助が一人残されました。
この家からいなくなっていった家族を思いながら、弥之助は息を引き取り、小さな家にはもう誰もいません。
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評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第36回競作「引き算」 / 参加作
執筆年 
2004年?
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