まつじ/スクリーン・ヒーロー
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最新の移動撮影用ビデオカメラを担いだ連中が、有事の際に備え常にどこからかこちらを監視している。
近所の野良猫相手にこの体の愚痴をこぼしたりしていると、ぴんぽんぱんぽん、迷子の呼び出しのような音に続き
「東京は足立区にて、怪人が発生しました」
きれいな声のアナウンスが全国に流れる。
専属カメラの録画ボタンが押されれば、足立区の、は人間ではなくなる。
いやあ、ぼくの管轄じゃなくてよかった。ひやっとした。
というようなことがあった次の日の映画館は非常に混み合う。
怪人と、たとえば足立区のとのたたかいの編集された映像が見られるのだ。
変身してしまった後の足立区のが、でかい画面で怪人とたたかう。
あれで録られた体は、勝手に動くようにされているから嫌がっても仕方がない。
怪人が巨大化し、足立区のが巨大化するとやんやの喝采、足立区のがやられそうになれば知らないおっさんが「なにやってんだ、ばあか」などと言う。
このわけのわからん状況は、映画屋と政府と悪の秘密結社の陰謀なんじゃなかろうかと勘繰ってみる。
とりあえず、あのおっさんとかカメラの奴らの息の根が止まればいいのに。
なんてな話を、今日はハトに豆やりながら話したりしているとまたぴんぽんぱんいう。
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この話が含まれたまとめ 
評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第82回競作「スクリーン・ヒーロー」 / 参加作
執筆年 
2009年?