まつじ/とまどいもしない29
Last-modified: Thu, 18 Feb 2021 23:45:29 JST (1162d)
読む
知人が何者かに殺されたという。警察が来たが、俺が捕まる理由はないので普通に応対してやった。この前俺と知人が会っていたという情報があって、一応、話を聞きに来たのだそうだ。とりあえず、ひととおり被害者の話と俺との関係なんかを訊ねて警察は帰っていった。
「あまり驚かないんですね。」
「ええ、そんなに親しい間柄でもなかったですし。」
会話の途中のやりとりを思い出す。実際、それほど話す仲ではなかった。死を聞いて悲しんだり、驚いたりするほどの人間じゃなかった。ろくな男じゃなかった。人の弱みを握って脅してくるような屑だ。そうか、死んだか。死んで当然だろう。そう、当然だ。やっぱり死んでいたか。念のため証拠を消しておいて良かったな。それにしても、あの男はどこで俺が昔こどもを殺したことを知ったのだろう。男を殺せば済むことだから、焦りもしなかったが。警察が訊ねてくるのも予測できたことだ。しかし、あれは少し戸惑って見せた方が良かったかな。変に勘繰られても困る。これからは気を付けなくてはな。
ジャンル
カテゴリ
この話が含まれたまとめ
評価/感想
初出/概要
超短篇・500文字の心臓 / 第44回競作「とまどいもしない」 / 参加作
執筆年
2004年?
その他
Counter: 495,
today: 1,
yesterday: 0