まつじ/これでもか13

Last-modified: Thu, 04 Feb 2021 23:46:51 JST (1169d)
Top > まつじ > これでもか13

読む Edit

 ぼくは、朝を見たことがない。

 父さんが子供のときに朝はなくなってしまったのだそうだ。会ったことのないおじいちゃんは父さんと同じ発明家で、お父さんにまた朝を見せようと色々な研究や発明をしたのだけど、結局、何もできずに死んでしまって、だから次は父さんが朝を作ろうと決めたんだと、いつか父さんがぼくに教えてくれた。朝の空は青いんだということを教えてくれたのも父さんだった。

 それでも、あんまり何度も失敗するから父さんに、もう諦めたらどうかと言ったことがある。 

 父さんはそれから何日かあとに死んでしまった。事故だった。

「いつか、おまえに朝を見せたいんだ」

 と、ぼくの質問に、目を合わせないようにして答えた父さんみたいに、今はぼくがいつか、君に朝を見せたい。駄目でも駄目でも、これでもか、これでもかと、おじいちゃんや父さんと同じ口癖を言いながら、いつかぼくが朝を作る。そうして、ぼくたちは見たことのない青い空を、ふたりで並んで見上げるんだ。

ジャンル Edit

SF家族祖父

カテゴリ Edit

超短編/カ行

この話が含まれたまとめ Edit

すぐ読める

評価/感想 Edit

初出/概要 Edit

超短篇・500文字心臓 / 第43回競作「これでも」 / 参加作

執筆年 Edit

2004年?

その他 Edit

Counter: 543, today: 1, yesterday: 0