まつじ/きみはいってしまうけれども
Last-modified: Mon, 04 Oct 2021 23:31:17 JST (934d)
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薄暗い部屋。窓の外で雨音。机の上の手紙。添えられた言葉は、結局、短い。
流し台から水音。
電気のない部屋。静かに降る雨。小さな滴がやさしく叩く。包み込み、閉じこめるように、全部覆う。
流し台から水音。
霧がかった風景。何かがひっそり流されていく感覚が耳に貼り付く。鳴っているのかいないのか、分からなくなる。一人きりの部屋。
流し台から水音。
机の上の手紙。薄暗い天井。窓の外は雨。あまり静かで絶え間なく、何も降っていない気がする。全てが止まっているような錯覚を起こす。
霧がかった風景。
机の上の手紙。
繰り返す言葉。
一人きりの部屋。
繰り返す言葉。
灯りのない部屋。
くりかえす言葉。
机の上の手紙。
くりかえすことば。
降っているのか、いないのか分からなくなる。
霧がかった風景。窓の外は薄暗い。机の上の手紙。添えられた言葉は短い。
誰もいなくなった部屋。
いつか変わる景色。
机の上の手紙。
流し台から水音。
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初出/概要
超短篇・500文字の心臓 / 第76回競作「きみはいってしまうけれども」 / 参加作
執筆年
2008年?
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