海音寺ジョー/ゴンパパ
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ゴンパパの本名は大林権三といい、男性ギターデュオのゴンチチとは何の関係もない。
権三はシングルファザーになりたいという明確な願望を十代の頃から抱いていて35歳になる今日までゴンパパと自称しているのだ。
無論独身である。
ゴンパパは女性が苦手で、公式にお付き合いしたことは何度かあるのだが、3ヶ月以内に関係は破綻をきたした。でも子供は欲しいのである。
ゴンパパには子宮がないので、一人ではどうしても作れないので子宮をレンタルさしてくれる女を募集していた。アルバイト誌にお願いしたが、『an』も『フロムA』も掲載を拒否。しかたなく自分のHP(ホームページ)でコッソリ求人広告を出したが誰からも反応はなかった。パパ願望が独行してゴンパパの寂しさはつのるばかりだった。
『そうだ。この際、血のつながりなど無視し、養子をもらおう』
ゴンパパは発想の転換にウキウキ気分を久々に取り戻した。が、同時に小心者のゴンパパは不安になった。
(ガールフレンドもキープできなかった未熟者の俺に、はたして赤の他人である子供の命を預かれるのだろうか?)
ゴンパパは小心者にありがちな、生真面目な性格(たち)だった。
ゴンパパは実験的に、まず動物を飼うことにした。
比較的飼育が楽そうな二匹のハムスターを駅前のペット店で購入してきた。
『思えば動物を飼うことも生まれて初めてだよなあ』
ゴンパパはワクワクした。
団地っ子だったゴンパパは、少年時代、動物が飼いたくてたまらなかったことを思い出した。そもそもゴンパパの父親願望は高校生の頃、近所の子供の世話をまかされた時に植えつけられた。
近所のママさんが友達と遊びに行く時、暇そうにしてた権三に息子を預けたのが発端だった。ゴンパパは、それを契機に保父さんになろうとしたのだが、採用されずサラリーマンに落ち着いた経緯を振り返りつつ、ハムスターの籠を掃除するのだった。翌日、仕事から家に帰ると、二匹のハムスターはどっちも死んでいた。死因はエサの不備らしかった。ゴンパパは落涙した。